ΕΚ ΤΟΥ ΜΗ ΟΝΤΟΣ

熱い自分語り

【詩和訳】ハリール・ジブラーン『狂人』より「挫折」

 今日もじゃんじゃん訳しますよーハリール・ジブラーンのThe Madman和訳コーナーのお時間です。提供はミナミノミナミノ凄い奴Project Gutenberg Australia*1です。

 今回訳したのは'Defeat'という作品。こいつにはあたくしちょいと思い入れがあります。ハリール・ジブラーンの詩に初めてで会ったのは、たぶん今からちょうど10年ほど前で、当時自分はたいそうな苦難の中におりました。そんな折に、神谷美恵子の『うつわの歌』に収められたこの詩を読んで、大きな慰めを得たのでした。自分にとって原点とも言える作品です。こうして自分で訳せてよかったです。

 神谷美恵子の訳は実に繊細かつ端正で、あっしなんかもうただただひれ伏すしかありません。なので今回は、散文的に、かつ割と粗野に訳してみました。野郎の漢気で勝負です。

 今年も皆様に沢山の苦難と挫折が訪れるかもしれないですが、堂々と生きましょう。

 

Defeat


Defeat, my Defeat, my solitude and my aloofness; You are dearer to me than a thousand triumphs, And sweeter to my heart than all world-glory.

Defeat, my Defeat, my self-knowledge and my defiance, Through you I know that I am yet young and swift of foot And not to be trapped by withering laurels. And in you I have found aloneness And the joy of being shunned and scorned.

Defeat, my Defeat, my shining sword and shield, In your eyes I have read That to be enthroned is to be enslaved, and to be understood is to be levelled down, And to be grasped is but to reach one’s fullness and like a ripe fruit to fall and be consumed.

Defeat, my Defeat, my bold companion, You shall hear my songs and my cries and my silences, And none but you shall speak to me of the beating of wings, And urging of seas, And of mountains that burn in the night, And you alone shall climb my steep and rocky soul.

Defeat, my Defeat, my deathless courage, You and I shall laugh together with the storm, And together we shall dig graves for all that die in us, And we shall stand in the sun with a will, And we shall be dangerous.

 

挫折


 挫折よ、我が挫折、我が孤独にして超然よ。お前は千の勝利よりも愛しく、この心には世の栄光よりも甘い。

 挫折よ、我が挫折、我が自覚にして挑戦よ。お前のお蔭で分かったよ。俺はまだ若く足早だ。思わずひるむような月桂冠には捕えられるべきでない。お前の中で、俺は孤独の何たるかを見出したし、避けられ、軽蔑される喜びにも出会った。

 挫折よ、我が挫折、我が輝ける剣と盾よ。お前の眼を見て分かったよ。玉座につくとは奴隷になること。理解されるとは均されること。そして把握されるとは、誰かを満足させんとすることであり、熟した果実が地に落ちて、食べ尽されるのにも似ていると。

 挫折よ、我が挫折、我が勇敢なる道連れよ。俺の歌と叫びと沈黙をお前に聴かせてやろう。また、お前だけから聞かせてもらおう。翼の羽ばたき、海の寄せる音、夜に燃える山々を。そして、険しく岩だらけなこの魂を、お前だけに登らせてやろう。

 挫折よ、我が挫折、我が不死なる勇気よ。俺とお前とで、嵐と共に笑ってやろうじゃないか。俺たちの中で死ぬ全てのもののため、墓を掘ってやろうじゃないか。陽の照らす中、決意を持って立ち、危険な存在となってやろうじゃないか。