ΕΚ ΤΟΥ ΜΗ ΟΝΤΟΣ

熱い自分語り

The Things I Did Last Summer

 今日は仕事が半ドンだった。帰りに会社近くのイオンに入ってるTSUTAYAを物色してたら、奇跡的に『君の名は。』が一枚残っていた。即座に借りて、スーパーで鯵の南蛮漬けを買って、帰って飯食ってから久しぶりに観た。大体一年ぶりくらいだろうか。記憶に違わず、いい映画だった。さすがにノートPCのモニターだと若干褪せるが、それでも美術の美しさは突出しているし、ラストのカタルシスもたまらない。でもそれ以上に、音楽が印象的だよなあ。RADWINPSの「前前前世」と「スパークル」なんかは、去年の夏と秋の狭間、どこに行ってもかかっていた。会社の飲み会で行った海鮮居酒屋でもかかってたし、本屋の帰りに寄ったバーミヤンでもかかっていた。だからこの曲を聴くと、去年の夏を思いだす。

 話の枕こそ『君の名は。』だが、去年の夏は『シン・ゴジラ』づくしだった。去年のちょうど今頃にTOHOシネマズで初めて観てから、結局劇場では七回観た。まあ、中堅どころってとこっすかね。普通の劇場で二回観て、IMAXで三回観て、某大音響上映で一回観て。残る一回は発声可能上映だ。あれは楽しかったなあ。特にコスプレとかはしなかったけど、声の限りに叫びまくり、終わる頃には喉が凄いことになっていた。あれは一種の大喜利大会だった。画面に対し誰が一番気の効いたツッコミを入れられるかみたいな、そういう競争意識が、いつの間にか観客の間に芽生えていた。俺もかなりウケを取れたが、劇場をいちばん沸かせたのは、俺の真後ろに座っていたあんちゃんだった。ちくしょうめい。

 つくづく、去年は邦画当たり年だった。『シン・ゴジラ』に『君の名は。』に『この世界の片隅に』。間髪入れず、歴史級の名作が次々に姿を現し、俺たちは息つく間もなく、泣いたり怒ったり笑ったりした。去年、職場のあれこれに振り回され押しつぶされそうになった俺が、それでも今日を迎えられたのは、あの名作たちが支えてくれたからに他ならない。どんなにしんどいことがあっても、タバ作戦や「きみの、名前は・・・?」やすずさんの笑顔を観れば、何とか踏ん張れた。

 それに比べると今年の夏の邦画はひでえ体たらくだなと嘆息せずにはいられない。だが観方を変えれば、今はそんな支えがなくとも何とか自力で踏ん張れてるってことでもある。もしかしたらあの作品群は、俺にとっての補助輪みたいなもので、それに助けられて走るうちに、いつしか自分で走る方法を、知らぬ間に身に付けたということなのかもしれない。これまでもこれからも沢山の映画に触れたし触れるだろうが、こんな関わり方をするのは、もしかしたら去年が最後かもしれない。

 最近Beverly Kenneyという歌手を知って、この人のCDを熱心に集めている。嵌るきっかけになったのは『二人でお茶を +1』というアルバムに収められた’ The Things We Did Last Summer’という曲で、お察しの通り、こんな内容だ。

The leaves begin to fade like promises we made
How could a love that seemed so right go so wrong
That things that we did last summer
I'll remember all winter long

木の葉が移ろいはじめてる ふたりが交わした約束みたいに
あんなに確かに思えた愛 どこで間違えちゃったのかな
あの夏に ふたりでしたこと
冬の間じゅう あたしは思いだすんだろうな

 

 どうにも自分は「記憶」とか「想起」といったものに特別の愛着を抱いているみたいで、ここまでくると一種の呪縛にも思える。でも、想い出が概して美しいことは、今の俺にとり、最大の救いでもある。これからの人生、まだまだ悲惨な目にあいまくるんだろうが、それもすべて過ぎ去ってしまえば、すべて研磨され、丸く美しくなってくれる。自分を見ていると、そう確信できるのだ。だって、あの夏すらも、今振り変えればこんなにも綺麗だ。

 
 それにしたって今年の夏は、ホントに映画が面白くねえなあ。劇場に行くってのは一つの彼岸の体験だと思うので、作り手の人間はもちっと自覚と覚悟をもって仕事をしてもらいてえっすな。ただ、来月は『ダンケルク』、再来月は『アウトレイジ最終章』とすんばらしいラインナップが揃っております。やなことは山ほど積まれてるけど、こいつらがいてくれれば、今年も何とか凌げそうだ。あーー、もっと給料高いとこ転職してえなーー。ホームシアターが欲しいっすなーーーーーーー!!!!

 


The Things We Did Last Summer ~ Beverly Kenney

 

君の名は。

君の名は。

 
二人でお茶を +1 (紙ジャケット仕様)

二人でお茶を +1 (紙ジャケット仕様)