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ΕΚ ΤΟΥ ΜΗ ΟΝΤΟΣ

熱い自分語り

【詩和訳】ハリール・ジブラーン『狂人』より「戦争」

 月曜で死にそうだけどハリール・ジブラーンのThe Madmanを訳すぜのコーナー。提供は不滅の英雄Project Gutenberg Australia*1です。今日訳したのは'War'という作品。タイトルも含め、何とも恐ろしくおぞましい内容です。でも、このおぞましさはこの世の中では決して珍しいものではないのでしょう。

 

War


One night a feast was held in the palace, and there came a man and prostrated himself before the prince, and all the feasters looked upon him; and they saw that one of his eyes was out and that the empty socket bled. And the prince inquired of him, “What has befallen you?” And the man replied, “O prince, I am by profession a thief, and this night, because there was no moon, I went to rob the money-changer’s shop, and as I climbed in through the window I made a mistake and entered the weaver’s shop, and in the dark I ran into the weaver’s loom and my eye was plucked out. And now, O prince, I ask for justice upon the weaver.”

Then the prince sent for the weaver and he came, and it was decreed that one of his eyes should be plucked out.

“O prince,” said the weaver, “the decree is just. It is right that one of my eyes be taken. And yet, alas! both are necessary to me in order that I may see the two sides of the cloth that I weave. But I have a neighbour, a cobbler, who has also two eyes, and in his trade both eyes are not necessary.”

Then the prince sent for the cobbler. And he came. And they took out one of the cobbler’s two eyes.

And justice was satisfied.

 

戦争


 ある夜、宮殿で宴が開かれた。すると一人の男が来て、王子の前にひれ伏した。宴の出席者は皆、彼に目を向けた。彼の片方の眼がくり抜かれており、空の眼窩から血が流れているのが見えた。王子は彼に尋ねた。「お前に何が起こったのか」。その男は答えた。「王子さま、わたしは泥棒を生業としております。今夜は月がなかったので、両替屋に盗みに入ろうとしました。ですが、よじ登って窓から忍び込もうとしたら、誤って織物屋に入ってしまったのです。そして、暗かったため織機とぶつかってしまい、この眼が取れてしまったのです。そこで、王子さま、あの織り手に正義の罰を下してほしいのです」

 そこで王子はその織り手を召し出した。彼が来た。そして、彼の片方の眼も取らねばならないと決定された。

「王子さま」と織り手は言った。「その決定は正しいものです。この眼の片方が取られるのは正当なことです。ですが、ああ! わたしには両方の眼が必要なのです。そうでないと、織っている布の両側を見ることが出来ません。ですが、わたしには靴屋の隣人がいます。わたし同様、眼は二つ揃ってますが、彼の商いには二つも必要ありません」

 そこで王子はその靴屋を召し出した。彼が来た。そこにいる者が、靴屋の二つの眼のうち、片方を取った。

 こうして正義は果たされた。