ΕΚ ΤΟΥ ΜΗ ΟΝΤΟΣ

熱い自分語り

【歌詞和訳】Will this be the song I'll be singing tomorrow(『死亡遊戯』EDテーマ)

 うちの母親は大変立派な人間で、物心ついたばかりの俺にブルース・リーの映画をたらふく与えてくれた。小さい自分には難しい話は何も分からなかったけれど、格好いいヒーローがカンフーで敵をやったらめったら倒しまくるのは痛快だった。それから今に至るまで、種々のカンフー映画を折に触れては摂取して生きてきたのだが、彼の遺作である『死亡遊戯』をちゃんと観たのはごく最近のことだった。未完成な内容が色んな人間にこねくり回されてる感じがして、これを観るのは本当にブルース・リーの意思に適うのだろうかと思ったのだ。果たして、映画自体は褒められたものではなかった。いや、ブルース・リーの演武はこの上なく素晴らしいが、やっぱり何というか、まだまだ手を加えるべきものを無理やり形にして世に出してる感じがした。でも、そこに大きな救いを与えてくれてたのが、名匠ジョン・バリーの音楽だ。OP曲のカッコ良さも特筆すべきだが、ここに訳したED曲が本当に本当に素晴らしかった。
 この映画のEDシークエンスには、過去のブルース・リー作品の名場面が散りばめられている。演武もあればラブシーンもあり、実に絢爛たる内容で、彼が短い生涯でどれだけの宝を残してくれのか、改めて確認させられる。でも、最後の最後に、ブルース・リーの最後の作品の幕引きとして選ばれたのは、芒の茂る草むらに、彼が独り座って、どこか不安そうな表情を湛えている場面だった。それはもちろん、単なる映画の一場面であり、演技に過ぎない。でも、そこからは、カリスマや天才の奥に潜む、ブルース・リーという人間の姿が垣間見えるように感じた。彼は天才だった。空前絶後の天才だった。でも、その才能ゆえに、彼は孤独だったんじゃないかと思う。確かに彼は良き師にも、素晴らしい家族にも恵まれたが、それでも、彼は究極的には孤独だったんじゃないかと思う。最後の最後に、この映画は、そのことを暴露したように思った。でも、そこで流れるのがこの歌なのだ。自分と共にいる人の心を慰めるために、美しい歌を探す歌。それはもしかしたら、彼に魅了され、彼を愛したすべての人の望みと願いをうたったものなのかもしれない。『死亡遊戯』は決して褒められた映画ではないかもしれないけれど、でも、彼のフィルモグラフィーの最後が、こんなにもうつくしい祈りで締めくくられたことだけは、100パーセント肯定したいと思う。
 えっと、まあ、あの、すっげえいい歌です。ほんっとうにいい歌。ジョン・バリーありがとう。

 

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【歌詞和訳】Just Like a Butterfly That's Caught In The Rain

 かなり古い歌ですが、今の時代の色んな人に共感してもらえるような内容だと思います。雨に濡れた蝶なんてうつくしいもんじゃないけれど、何となく似たような仕方で自分も疲弊しています。はやく晴れてほしいもんです。

 

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『海底大戦争 スティングレイ』のOPとEDを訳してみた(Barry Gray / Stingray, Aqua Marina)

 少し前に『宇宙船XL-5』のEDを訳したので、今回はそれに続くジェリー・アンダーソンの大傑作海洋SF人形劇『海底大戦争 スティングレイ』のOPとEDを訳してみました。どちらもクッソ名曲です。バリー・グレイの天才が炸裂しています。特にEDの"Aqua Marina"なんかたまんないっすね。冒険SFもののEDテーマとしてこういうメロウなナンバーを採用するあたり、やはり大英帝国のセンスは素晴らしいとしか言いようがないっス。ちなみに、"Aqua Marina"ってのは劇中のヒロインの一人の名前で、言葉が喋れない設定なんですよね。そこも踏まえると歌詞が一層深みを増します。

 

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【詩和訳】ハリール・ジブラーン『狂人』より「三匹の蟻」

 日曜なのでハリール・ジブラーンのThe Madmanを訳すんべかなのコーナーです。テクストは南の国からこんにちはProject Gutenberg Australia*1です。今回訳したのは'The Three Ants'という小品。自分の見てる世界がどれだけ狭いのかわかってないのは、たぶん人も蟻んこも同じなんでしょうね。

 

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「おかあさんといっしょ」名曲15選

 今日3月30日をもって、だいすけおにいさんが「おかあさんといっしょ」を卒業するそうです。2008年から9年間に渡ってうたのおにいさんを務めたとのこと。おさむおにいさんよりも長い期間この大役を果たしてきたんですねえ。wikipediaによれば、だいすけおにいさんは高校生の頃からうたのおにいさんになることを志していたらしく、努力に努力を積み重ねてその夢を実現させたそうです。だいすけおにいさんの不屈の精神に感嘆すると同時に、これほどまでに誰かを魅了する「おかあさんといっしょ」という番組の素晴らしさを再確認しました。

 自分も小っちゃい頃に夢中になってこの番組を観てはいましたが、その魅力を本当に理解できたのは、20歳を過ぎてからだった気がします。図書館で懐かしいと思って借りた「おかあさんといっしょ」のCDを聴いて、その楽曲の豊かさに心底驚いたのを今でも覚えています。この番組が名曲はそれこそ星の数ほどありますが、とりあえず独断と偏見で、自分のお勧めの曲を15ほど選んで紹介してみたいと思います。youtube等の動画を貼りまくってるので糞みたいに思いです。アテンション!

 

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【歌詞和訳】Paul McCartney and Wings / Live and Let Die(『007 死ぬのは奴らだ』OPテーマ)

 どうも、不詳わたくしめ、ムーア・ボンド原理主義者の母を持つダルトン・ボンド原理主義者でごぜえます。どうも、どうも。自分は割と映画が好きな部類なのですが、間違いなく母の影響だと思います。うちの母は60年代~70年代の娯楽映画がたいそう好きな人間で、スティーブ・マックイーン主演の『パピヨン』とか、007シリーズとかの魅力をおいらに教えてくれました。いい母だなあ。そんな母が歴代ボンドの中でいちばん好きだったのがロジャー・ムーアでした。全身からむんむんと薫る軽妙洒脱さに、母は完全にイカレておりました。しかし、息子というのはいつの世も不肖なもの。おいらは母の「ムーア・ボンドこそ至高」という金科玉条に背き、ティモシー・ダルトンのボンドこそ我がボンドと思うようになってしまいました。そのことは母にどうしても伝えられませんでした。息子がこんな背徳を犯すなど、母にどうして耐えられましょう。しかし、どうしてもここで告白せざえるを得なかったのです。もう、これ以上、秘めておくことは出来なかったのです。だから、せめて、母が一番好きだったOPテーマを訳すことにします。一番好きだった、と言っても、作品自体は全然好きじゃなかったみたいですが。母のベストは『私の愛したスパイ』。わかる。確かにあれは最高。

 

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【歌詞和訳】Smoke Gets in Your Eyes

 この世に数多ある失恋ソングの中でも間違いなく最高峰に位置する曲でしょう。「煙が目に染みる」って訳した人の功績は本当に偉大。ザ・プラターズが歌ったバージョンが一番有名なのであんまりピンとこないかもですが、歌詞を見る限り、若い女性が失恋した歌なように思います。そんな感じで訳してみました。

 あと、この曲いろんな映画とかドラマでも劇伴として使われてますが、個人的にはエドワード・ヤンの『恐怖分子』で流れてたのがいちばん印象的ですね。おっそろしく美しい映画だったなあ、あれも。はようク-リンチェみたいんじゃ。

 

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